KaRMo - 鴨川放射能モニタリングプロジェクト
Kamogawa Radiation Monitoring Project powered by L.P. Ina-Kappe
防護指針

鴨川放射能モニタリングプロジェクト(KaRMo)では以下の防護指針にしたがって、活動を展開していく。
1.事故後1年目=5ミリシーベルト/年 2年目以降=1ミリシーベルト/年を被ばく限度とする。
放射線防護(放射能・放射線から身を守る)において最も重要な方針の一つに、年間何ミリシーベルトまでの被ばくを許容するか(=年間許容被ばく線量)という事項があります。
これについては各機関、団体、専門家によって見解が大きく異なっています。国際的な指針として広く使われてきたのはICRP(国際放射線防護委員会)の勧告による年間1ミリシーベルトですが、福島原発事故においては日本政府が年間20ミリシーベルトを適用し物議を醸しました。
放射線のリスクを大きく見るECRR(欧州放射線リスク委員会)やドイツ放射線防護協会 等の団体や専門家は年間許容被ばく線量をかなり厳しく設定しています。
もちろん放射線の被ばくを少しでも減らすことは大切ですが、深刻な原子力災害後の現実を直視した上で、この状況下で生活していくという現実と放射線のリスクのバランスを考えて判断していく必要があります。

そこで、当プロジェクトでは、2009年に原子力安全委員会にて検討されていた、原子力災害時の飲食物摂取制限の目安をもとに年間許容被ばく量を設定することにしました。(この目安が今回の事故には全く適用されなかったことが残念でなりません)
事故前に検討されていたものであり、WHO(国連世界保健機構)やFAO(国際連合食糧農業機関)のデータを参考にしていることから、比較的フェアな目安と考えられます。

当プロジェクトは原発事故に由来する放射線による年間許容被ばく線量(実効線量)として、外部被ばく・内部被ばくをあわせて、以下の値を設定します。

事故1年目:5ミリシーベルト/年(mSv/y)
2年目以降:1ミリシーベルト/年(mSv/y)

本来ならば、1年目も年間1ミリシーベルトに抑えるべきですが、代表・岡野の試算では特に事故後多くの放射性物質が拡散した3・4月を中心に、すでに外部被ばく・内部被ばくをあわせて、1ミリシーベルト以上、あるいは1ミリシーベルトに迫る原発事故由来の被ばくを受けていると考えています。
したがって、現実の状況を鑑みると、2009年の原子力安全委員会の検討の通り、1年目は年間5ミリシーベルトを一つの目安とすることが妥当だと考えられます。
また、法律で定められている放射線管理区域は3ヶ月あたり1.3ミリシーベルトを超えるおそれのある区域であり、年間に換算すると5.2ミリシーベルトとなり、これも一つの根拠となっています。
ただし、子ども、乳幼児については被ばく量を極力少なくするべきです。

* 興味のある方はこちらも御参照ください。
  >>> 飲食物摂取制限
  >>> 鴨川市における被曝許容量と目安値の一考察(代表・岡野の試算)

2.現時点では放射性ヨウ素131は考慮しない。(2011年10月1日現在)
原発事故直後、大量に放出された放射性ヨウ素131ですが、半減期が8日と短く、原子炉の冷却によって現在は当時と比べると放出量はかなり減少しているものと見られます。
食品の放射能濃度検査結果を見ても、ここ数ヶ月は放射性ヨウ素131についてはほとんど検出されておりません。
したがって、当プロジェクトでは放射性ヨウ素131は原発に新たなイベント(爆発的事象や大規模な放射能漏洩)が起こらない限り、考慮しないこととします。
簡易検査で得られる放射能濃度についても、放射性セシウム134・137の総量と見なして良いと考えます。

3.飲食物に含まれる放射性セシウム134・137の総量の目安値として100ベクレル/kg(L)を設定する。
原発事故後、政府は暫定基準値として放射性セシウム134・137の総量を飲料水・牛乳・乳製品については200ベクレル/L、野菜・穀物・肉・魚介類等の食品については500ベクレル/kgを設定しています。。
この値については目下さまざまな議論が展開されていますが、長期間摂取する場合、より厳しい基準値を設定すべきであると考えます。

放射性物質を含む飲食物を摂取したときに体内から受ける内部被ばくについては、放射性物質の量(ベクレル/kg)からある一定期間に受ける放射線量=預託実効線量を求めることによって評価します。
したがって、飲食物に含まれる放射性物質の量の基準値を考える際は、年間許容被ばく線量を設定し、預託実効線量をもとに放射性物質の量を逆算することによって導くことができます。詳しい計算方法や数式、算出の根拠については簡潔に説明することが難しいですので、ここでは省きます。

結論を申し上げますと、当プロジェクトとしては飲食物に含まれる放射性セシウム134・137の総量の目安値として100ベクレル/kg(L)を設定します。
理由を以下に列挙します。

(1) 現実の生活と放射線のリスクとのバランスを考えた上で設定しました。
(2) ICRP(国際放射線防護委員会)やECRR(欧州放射線リスク委員会)の係数を使って計算、シミュレーションした結果、100ベクレル/kg(L)は許容できる量と判断しました。
(3) 100ベクレル/kg(L)いっぱいの飲食物だけを毎日摂り続けることは現実にはありえず、現在の飲食物の検査結果を見ても「不検出」のものが多い中、確率的に時々100ベクレル/kg(L)の飲食物を摂取することがあるかもしれないという想定で算定しました。
(4) EUの食品における放射性物質の許容水準の上限として、ベビーフード 200ベクレル/kgが設定されており、この値に対しても半分の量であるため、十分に安全に運用できる値と判断します。
  >>> EUの食品における放射性物質の許容水準の上限
  * 3月までは400ベクレル/kgでしたが、4月より日本の水準にあわせて厳格化されました。

4.冷静に“正しく怖がる”リテラシーの向上を同時に図る。
放射線から身を守るためには、極力余分な放射線を浴びないことが大切です。
しかし、自然界には日常的に放射線は存在しており、原発事故前からも私たちは少なからず放射線を被ばくしてきました。
また、1960~1970年代に世界中で頻繁に行われていた大気中核実験や1986年のチェルノブイリ原発事故によって全世界に拡散した放射能の影響はいまでも残っています。
したがって、0か1か、白か黒か、といった二極的な考え方で放射線をとらえてしまうと、逆にパニック的な反応を呼び起こしてしまい、極論すれば日常生活を送ることができなくなってしまいます。
殊に福島原発事故によって環境が一変した現在においてはなおさらです。

大切なことは放射能や放射線について、最低限の知識をしっかりともち、現実を直視した上で、冷静に判断することです。
“正しく怖がる”ということが放射線から身を守るために必要です。

当プロジェクトでは情報公開を原則としますが、あわせて、数値を独り歩きさせないための土壌づくりにも力を入れます。
市民向けのセミナー、意見交換会などを積極的に行い、お互いの立場を理解し合い、尊重した上で、各々が抱える不安を共有し、さらに基礎知識を身につけることで、放射能や放射線から市民・業界・行政が一体となって冷静に“正しく怖がり”対処していく環境を醸成していきます。
* 参考
>>> 食品中の放射能
>>> 各種食品中の放射性核種の種
>>> 日常の食生活を通じて摂取される放射性核種の量
2003年・2004年にリリースされた文章です。
事故前においても、食品には天然の放射性物質や1960~1970年代の大気中核実験に由来する放射性物質などによって、日常的に被ばくしていることがわかります。
特にきのこに含まれる放射性セシウム137の量は多く、マツタケでは平均17.8ベクレル/kgものセシウム137が含まれているとされています。
事故前でも放射性物質を摂取していた事実を理解するだけでも、少しは安心できるでしょう。
>>> 道南地域における放射線量率の分布及び放射性セシウム等の含有量について
2003~2005年度に行われた北海道道南地域での土壌調査の結果をまとめた論文です。
多いところでは10ベクレル/kgを超える放射性セシウム137が検出されています。これは大気中核実験に由来するものと思われます。
半減期を考えると、核実験で放射性物質が拡散していた当時は少なくとも20~30ベクレル/kg以上の放射性セシウム137が土壌中に含まれたことになり、さらに半減期2年の放射性セシウム134も同量存在したと考えると、あわせて50~60ベクレル/kg以上の放射性セシウムが土壌中に含まれていたと推測されます。(雨水で流されたり、攪拌されたりすることを考えれば、もっと多く存在していたでしょう)
これは福島原発事故後の鴨川を含む南房総地域の土壌汚染度と同じか、それ以上のレベルです。
このことを知るだけでも、鴨川の汚染度のレベルが比較的低いことを理解できます。